妊婦の虫歯など、胎児への影響は?|妊娠中に気を付けたいこと|岡山にある歯医者【政久歯科醫院】
2024年6月24日
妊婦さんは、お腹が大きくなるなどの外見的・身体的な変化だけではなく、精神的にも変化があり、生活の色んなことが特別な状況になります。そして、その変化がお口の中の状態にも様々な影響を及ぼします。 ここでは、歯科的な視点で「妊娠中に気を付けたいこと」「予防の為の医院・岡山市の取り組み」などをお伝えします。
目次
〇妊娠に伴う口腔内への影響
妊娠に伴って生じやすい歯科的問題としては、以下のものがあります。
■虫歯の発症・進行
■歯肉炎や歯周炎の進行
■妊娠性歯肉炎
■妊娠性エプーリスの発生
■口内炎の発生
これらは妊娠による食嗜好の変化(酸っぱいもの・甘い物が食べたくなるなど)食事回数の増加、つわりによって満足に歯磨きが出来ないなどの環境の変化が関わっていると考えられています。妊娠期に知っておきたい『妊娠性歯周炎』と『妊娠性エプーリス』について説明します。
・妊娠性歯肉炎とは
妊娠中、特に妊娠終期には歯垢(プラーク)の存在に加えて、エストロゲン・プログステロンといった女性ホルモンが月経時の10~30倍にもなると言われています。このホルモンを好む細菌が増えることにより歯 周炎になりやすくなります。歯茎が腫れたり、出血することがあり、 そのまま不潔にしておくと、歯周病へと進行してしまいます。 妊娠中期から後期にに欠けて症状が悪化しやすいと言われています。 少ない歯垢(プラーク)や歯石で歯茎が腫れてしまい、お口の中全体に炎症が生じること もあります。 歯石の除去・歯磨き等でプラークコントロールを良好にすることで症状を最小限に抑えることができます。
・妊娠性エプーリスとは
妊娠中、歯茎にできる良性の腫れ(腫瘤)のことで、触ると出血したり、痛みを感じるこ とがあります。妊娠16周前後に自覚されることが多く、女性ホルモンの関与、歯石などの影響が指摘されています。出産後に自然に消えてしまうことが多いので、基本的には経過観察をすることとなります。
〇歯周病と早産の関係
歯周病と早産の関係も分かってきています。中等度~重度の歯周病になっている妊婦は、早産や低出産体重児の出産リスクが約7倍高いことがアメリカ・ノースカロライナ大学の研究で分かりました。 早産の原因としては、タバコやアルコール、高齢出産よりも『歯周病の人』のリスクが高いことも分かっています。更に虫歯による炎症によっても、早産の起こるリスクが高まります。このことからも妊娠期間中の歯科治療が重要であることが分かります。
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〇妊娠中に歯医者に行くのが不安な方へ
妊娠中に歯科醫院を受診することに不安を感じる方もいらっしゃると思います。 原則的に妊娠中に「一般的な歯科治療」を行ってはいけないという時期はありませんが、時期によって治療の内容や進め方が大きく変わるので、妊娠されている場合は必ずスタッフにお伝えください。 妊娠初期・中期・後期・出産後に分けて、それぞれの時期に知っておきたいポイントをご紹介します。
・妊娠初期(0~4ヵ月:1週~15週目)
妊娠初期に歯の健康診断を行うのが理想的ですが、妊娠初期は、つわりで治療中に気分が 悪くなることもあります。 消毒のニオイや、口の中を触られることで吐き気をもよおしたり、気分が悪くなりやす かったり、長時間の同じ姿勢がお腹に負担となることがあります。 負担がかかり続けると、脳貧血による立ちくらみや起立性低血圧が起こりやすくなりま す。この時期は、まだ赤ちゃんの状態も安定していないので、歯科治療を行う際には注意 が必要です。過度な緊張や長時間による治療はなるべく避ける時期です。
・妊娠中期(5~7か月:16週~27週目)
この頃には「安定期」と呼ばれる時期になっています。虫歯治療・歯周病治療など、いず れも必要な処置があればこの時期に積極的に治療することをお薦めします。受診される際 には途中で体調が優れなくなったり、楽な体勢などがあれば、遠慮なくスタッフに伝えて くださいね!できれば分娩までに治療を終えられると良いでしょう。
・妊娠後期(8~10か月:28週目~)
長時間の治療が妊婦さんの負担となるため、基本的には積極的に治療するのではなく応急 処置を行います。激しい痛みがある場合など、我慢できないような症状がある場合は、歯 科医師にご相談ください。
・出産後
出産後は免疫力が回復する2か月後が良いでしょう。
〇胎児へ薬の影響があるのか心配という方へ
歯科治療だけではなく、お薬の胎児への影響も心配される方も多いと思います。 ここでは、時期ごとにお薬が胎児に与える影響についてご紹介します。
・受精前~妊娠4週未満
この時期を『無影響期』といい、順調に妊娠が継続ができていれば赤ちゃんは薬の影響を 受けていたとしても完全に修復されて、形態的な異常は生じないとされています。
・妊娠4週目~8週未満
この時期を『絶対過敏期』といい、器官形成期で中枢神経が形成され、心臓や目、手足な どの重要な器官が作られ、薬や放射線による影響を最も敏感に受ける時期です。
・妊娠8週~16週未満
この時期を『相対過敏期 / 比較過敏期』といい、心臓中隔などの臓器や性器が形成される 時期です。大きな奇形には繋がりませんが、器官の形成も続く時期であるため、薬の服 用は慎重になる必要があります。
・妊娠16週~分娩
この時期を『潜在的過敏期』といい、胎児の形態異常は生じませんが、胎児の機能・発達 に影響します。 多くの薬剤は胎盤を通過して、胎児に移行します。 全妊娠期間使用可能な薬剤もあるため、妊娠している方は必ずその旨を伝えてください。
〇妊娠期の歯科検診の重要性
妊婦さんが歯科を受診される際は、ご自身の口腔内の変化に応じた対応と同時に、母体内で発育している胎児の健全な発育をも考慮した対応・アドバイスが必要になります。 当院では『マイナス1歳からの予防』として、虫歯予防・歯周病予防を行っています。 大人のお口を健康に保つことは生まれてくる我が子への虫歯菌の感染や低体重児出産などのリスクを下げることができます。 つわりや体調の変化により、普段通りの歯磨きが難しい場合も、うがいをする・小さめの歯ブラシの使用等でお口の中の清潔を保つ工夫を提案させていただきます。
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〇『妊婦・パートナー歯科健康診査』制度について
岡山市の取り組みとして、岡山市民である妊婦さんとそのパートナーを対象にした『妊婦・パートナー検診』があります。 妊娠期間中に1回、歯科検診と保健指導を受けることができます(クリーニングや治療ではありません) 妊婦さん、そしてパートナーがご自身のお口の中を健康な状態に保つこと、自分やお子様のお口の健康を守る為の方法・知識を付けることを目的としています。 そのためにも、まずは今の自分のお口の中がどのような状態かを知り、歯科医師・歯科衛生士からのアドバイスを受ける事が大切です。 今の状態を知ることで、出産前に適切な対応を考えることが出来ます。 母子共に健康で出産を迎える為にも、歯科の受診をお薦めします。 政久歯科醫院では、マイナス1歳からの予防に加えて胎児の発育との関連もお話ししています。特に胎児期の歯の発育に適切な栄養(タンパク質やカルシウム、ビタミンA、C、D等)の摂取が重要といった栄養・食事に関する指導も行っているので、ご家族みんなで『我が子の為の予防』に取り組まれてみてはいかがでしょうか?
この記事の監修者
院長:政久 直紀
経歴
- 広島大学歯学部 卒業
- 医療法人光済会 森本歯科医院 勤務
- 医療法人明生会 明生会歯科診療所 院長
- 政久デンタルオフィス 開業
- 政久歯科醫院 移転開業
- 医療法人社団BLISS 開設