精密根管治療:患者様が拍手しながら大喜び!溶けていた骨が改善したケース
2024年3月13日
他院からの紹介でご来院
2年前から、左下奥の歯ぐきにアブセス(膿のかたまり)があり、大きさが変わっていると他院を受診された30代女性。
噛み合わせても痛くないが、アブセスが大きくなると自発痛(何もしていなくても痛みがある状態)あり。
レントゲンを撮影すると、びまん性の透過像(広範囲でレントゲンが黒くうつっている)が認められた。
経過も2年と長く、難治性で ①マイクロスコープを使用した精密根管治療 ②抜歯 のどちらかが必要だとドクターが判断。
当時通院中の歯科醫院では、精密根管治療を行っていなかったため、政久歯科醫院を受診されました。
CTの撮影・診断
紹介状を手に来院された患者様は、ご来院時の問診では『歯ぐきが腫れ・痛い』と話されていました。
また、治療については費用が少ないことが最も大切であるというご希望があり。
紹介状とレントゲン・口腔内の状態を確認し、患者様同意のもとCTを撮影し現状を確認。
長い間、アブセスに悩まれていた左下奥の歯は
1本奥の歯の根尖(根の先)付近まで骨吸収が進行している状態でした。
また分岐部(歯の股の部分)も骨吸収が進んでおり、炎症の程度が強いことが予想されました。
覚悟していた診断結果 説明後の患者様のご希望
紹介されていた段階で、ある程度悪いことは理解されている様子だった患者様。
お口全体のお話しをした後「特に左下・前から6番目の歯はかなり大きく骨が溶けていて、抜歯になる可能性がある」と十分お伝えしました。
説明時、焦った様子はなく「歯を残したいのでいい治療でお願いします」とお話しされました。
今回の歯は、2本ある根っこのうち遠心根(奥の根)が骨が溶けている原因と判断し
「そこをしっかり掃除できるかがポイント」と伝えました。
マイクロスコープを使用した精密根管治療開始
今回の治療でも歯科用マイクロスコープを使用しました。
歯科用マイクロスコープは視野を数十倍に拡大!
肉眼やルーペでは見ることができない「歯の内部構造」まで鮮明に見ることができる歯科専用の顕微鏡!
マイクロスコープを使用すると
✅再治療:根管の中に感染源が残っていることの確認
✅抜髄:未発見の根管がないかの確認
など、感覚 ではなく直接目で見て治療ができるため、非常に有用な機械です。
治療を進めていくと、やはり骨が溶けている原因は遠心根にあると考えました。
また、近心根(手前の根)は石灰化していました。
石灰化とは簡単に言うと
「カルシウムの沈着で根管が詰まる、または歯髄内に石のようなものができる」というようなこと。
石灰化している根管が原因ではない場合、無理にこじ開ける必要はありません。
あくまで細菌感染をしている根管を治療することが重要です。
骨が溶けてしまう原因は、基本的には歯の根の中の細菌感染です。
複数の根がある歯の治療では、原因を探索すると同時に、原因ではない根管へのアプローチ方法も変える必要があります。
今回の患者様の歯は近心根には生活反応(神経が活きている反応)があり、
歯髄が生きていたため感染させないように、遠心根を触ったファイル(治療器具)で近心根を触れないようにしするなど工夫を重ねました。
歯根の清掃が終わり、いよいよ根充へ
綺麗になった歯の根の再感染を防ぐために、樹脂で密閉していきます。
今回は神経をとって、根管の中をキレイにしていく治療なので、根の先には貫通しておらず、
詰める樹脂は歯の根と歯周組織の境目をを壊さないように細心の注意を払いながら行いました。
骨が溶けた原因と考えられる遠心根は、ピッタリ解剖学的根尖孔まで樹脂を入れて密閉。
細菌感染という原因がなくなれば、生体は治癒しようとします。
根充が終わり、骨の状態が改善するかどうかの経過を見ることとなりました。
溶けていた骨の状態が改善!
治療後、患者様は拍手をしながらとても喜ばれていました。
治らないかもしれない・治療の予後が不明瞭な歯に対して、
適正な根管治療を行うことで劇的に改善するケースもあります。
治療終了から半年
治療後半年で経過の治療後の歯の状態のためご来院された患者様。
痛みも何もなく、快適に噛めているとのこと
治療直後や経過を見ていた期間よりも格段に状態が良くなっていました!
今回のような状態『根尖病変』は病気です。
今回、病気を取り除くことができとても嬉しく思います。
骨吸収(骨が溶けている状態)の改善は
歯の生存率を長くし「自分の歯を残す!」という観点で素晴らしいことだと感じます。
今回の治療を担当したのは副院長 政久侃祐
診療後や休みの日にも研修会や勉強会に参加しながら、自己研鑽を重ねている副院長に
かんすけ先生が患者様や診療に対して心がけていることは?と聞くと