子どもの矯正歯科治療について|岡山にある歯医者【政久歯科醫院】
2024年11月18日
現役歯科衛生士&3児の母の中島です。
二十数年前、歯科衛生士免許を取得したばかりの私は、子どもの歯並びは「悪くなったら矯正するしかない、悪くなる原因は遺伝だから仕方ない」と思っていました。 しかし、ここ数年の間で「歯並びは、遺伝+生活習慣(悪習癖)が原因となる」と耳にすることが多くなりました。 つまり、もしかしたら歯並びが悪くなるのを防げるようになる可能性も出てきたということです! そうと分かっていても、歯科衛生士である私ですら、歯並び予防に時間を割く余裕、気持ちの余裕がないな〜と子育てしながら感じています。 そこで今回は「いずれは、子どもの矯正歯科治療って必要かも?」と思っている方に、
・そもそも矯正歯科治療ってなに?
・どこの歯医者さんでもできるの?
・始めるベストなタイミングはいつ?予防ってできるの?
など、いろいろ知っていただきながら選択肢の幅を増やしてもらえる機会になればと思います。
目次
①そもそも矯正歯科治療ってなに?
矯正歯科治療とは、「悪い歯並びや噛み合わせを、きちんと噛み合うようにして、きれいな歯ならびにする歯科治療」です。しかし、きれいな歯ならびにするために、歯を削って「差し歯」にすることは、基本的にはありません。矯正装置を使って、歯やアゴの骨に力をかけてゆっくりと動かし、「歯並び」と「噛み合わせ」を治していきます。歯がふぞろいだったり、上下のあごの歯並びがお互いに噛み合わない状態を、専門的には「不正咬合」といいます。
不正咬合とは
出っ歯(上顎前突)、受け口(反対咬合)、八重歯・乱ぐい歯(叢生)、開咬、顎変形症などです。 一般的に矯正歯科治療に求めるものとしては、「見た目の改善」に重きが置かれているようです。 また、矯正歯科治療にも、言い方やパターンがあるのでいくつかご紹介いたします。
○形態矯正(歯並び・噛み合わせが悪くなった状態の改善)
一般的な歯科矯正治療は、ワイヤーなどを使用し、悪くなった歯並びを力を使って正しい歯並びや噛み合わせに整えていく治療方法です。 多くの方が矯正のイメージとして多く思いつくものではないでしょうか? 様々な方法があり、お口の中の状態により治療方法も異なります。 ・歯の表面(表裏)にワイヤーを1本ずつ歯に貼り付けて歯を動かしていく ・フェイシャルマスクを顎と額に装着して、上下の顎の前後的なバランスを整えていく ・上下の顎(内側)に装置を入れ、骨を上下左右に広げ、歯が並ぶスペースを作っていく (装置には固定式や着脱式がある) また、一つの方法だけでなく何個かの方法を組み合わせて行っていくこともあるため、治療期間や費用も異なります。
○予防矯正(悪くなる前の機能矯正:見た目を改善するより、機能面の改善がメイン)
予防矯正とは、歯並びを悪くしている原因を改善する治療で、正常な筋機能に整える方法です。 ここ数年では、歯並びや噛み合わせを治すというよりは、お口の周りの筋肉を整えることによって、理想的なお口に成長を促す予防矯正に重きが置かれています。 治療方法としては、筋機能トレーニングやマウスピース型矯正装置などがあります。 歯並びや噛み合わせが悪くなる原因となる、口呼吸や舌の位置、飲み込み方、姿勢などに対してアプローチを行います。その子に合った筋肉のバランスを身につけることで歯並びを理想的な方向へ整えていきます。理想的な顎の発達を促すために0歳から様々な形でアプローチすることが可能です。 メリットは、 ・子ども自身の本来の力を利用するため痛みが少ないこと ・自然な歯並びになる可能性がある ・歯並びだけでなく、姿勢や呼吸など全身の健康に関わることも身につけていくことができる という点です。 一方、デメリットとしては、親子双方の「やる気」が必要でかなり重要ということです。 日々の生活を送る中で、トレーニング時間の確保や気持ちの余裕があるか?が結果を左右します。
②どこの歯医者さんでもできるの?
まず、歯医者さんになるためには、 1)大学の歯学部か歯科大学で6年間の教育を受けます。 2)歯科医師国家試験を受けます。 3)合格した後、病院や診療所などで1年以上の臨床研修を受ける ことが義務付けられています。何年も勉強しないと歯医者さんになれないのですね! そして歯科医師になった後も、さらに様々な各分野の治療を極める「認定医」や「専門医」などといった資格制度があります。
※認定医の資格がないと歯科治療ができない訳ではありません。十分に知識と経験を積んだ歯科医師の先生であれば、治療はもちろんできるのでご安心ください。
矯正歯科医療の認定医資格は、日本矯正歯科学会の指定研修施設で「基本研修」と「臨床研修」からなる5年以上の研修を修了し、「診療活動」ならびに「学術活動」の実績などを積む事で得らます。5年毎に資格の更新があり、認定医の先生方は、日々勉強と経験を積み続けています。歯科医師全体の約2.5%しか存在しない認定医資格を持たれている先生に診てもらえるともっと安心ですね! 話が少しそれました。。。 矯正歯科治療は、たくさんの時間と努力を積み重ね、さらに十分な修練を積むことが求められている専門性の高い医療です。医療の世界は日進月歩であり、治療方法も様々な手法があります。 ここまで歯科医師の先生のお話をしてきましたが、歯医者さんを選ぶ際には、歯科医師の先生はもちろん、スタッフの対応も大切だと考えています。
- ・お家の方や子どもの要望を聞いてくれる
- ・必要な資料採取を行い、診査診断をしてくれる
- ・時間をかけて説明をしてくれる
なども当たり前のようで、実は歯医者さんを決めるポイントとしては重要!
さらに、
- ・治療方法を理解・納得できたか
- ・費用面の詳細な説明を受け同意したか
- ・医院までの距離や通院時間、スタッフ対応
なども含めて 通いやすいかを検討されると良いと考えます。 また、検査費用がかかることもありますが、セカンドオピニオンを受診し医院の比較検討も大切です。 やってみないと分からないこともあるかと思います。しかし、矯正歯科治療は長期間になることがほとんどです。できるだけ色々と知った上で、治療を受けるお子様、また支えるご家族にベストな選択ができることを願います。
③矯正歯科治療を始めるベストなタイミングは?
子どもの矯正を始めるときに絶対的年齢制限はありません。 ただ、一般的には、永久歯が生え始める6歳頃から永久歯が生え揃う12歳頃までに始めることが多いようです。最近では予防矯正などもあるので、6歳よりも早期に始められる方もいらっしゃいます。 また、開始時期を考える時に ・お子様のお口の状態(困っているのか?困ってないけど見た目が気になる?なども含む) ・兄弟がいる場合は、それぞれの状態によって開始時期の優先順位 ・進級、受験、習い事などのライフサイクルの状況 ・費用面の捻出のタイミング など、たくさん考えることがありますね💦
小児矯正には、永久歯が揃う前におこなうⅠ期治療と、永久歯が揃った後におこなうⅡ期治療があります。 子どもの矯正時期はⅠ期治療に該当し、 永久歯が生え揃うまでに治療し「大人になってから永久歯の歯並びがキレイに整う」ことを目的としています。 また、成長期の子どもでないとできない治療もあります。 小児矯正が必要だと判断した場合は、早期に治療を開始することで、トータルの治療期間や治療費用を抑えられます。 冒頭で歯並びは「遺伝+生活習慣(悪習癖)が原因」と耳にする事が増えたとお伝えしました。 遺伝は先天的な事ですので、アプローチが難しいです。しかし、後天的=産まれた後に身につける生活習慣であれば、アプローチが可能です♪ このアプローチは0〜18歳が対象になっており、早期に原因となる生活習慣(悪習癖)を見つけ、改善する事ができたら?! 歯並びを治す必要がなくなる可能性が見えてきますね✨
2018年から、お口の機能に着目されるようになり歯医者さんの保険診療に「小児口腔機能発達不全症」という診断が追加されました。今までは、保険ではできなかったため、なかなか認知されていなかった、お口の機能訓練が保険診療できるような改正がありました。 理想的なお口の機能を生活習慣の中で身に付けていくことにより、歯並びを悪くならないように予防する事が可能に! そして、その生活習慣は「姿勢や食事中のマナー」「風邪予防」「コミュニケーション力」などにもつながります。(ビフォアーアフターのイラスト) 万が一、歯並び予防ができず矯正歯科治療をすることになったとしても、機能が身についていることで、後戻り(矯正歯科治療終了後に歯並びが元に戻ってくる可能性)を防止することにもつながりますよ♪
【子ども矯正歯科治療をすると良いこと】
◆歯を清潔に保てる
歯並びが良い&お口の周りの機能が整っていると→歯垢が溜まりにくい/歯磨きがしやすい=むし歯や歯周病予防に繋がります。
◆コンプレックスを抱えない、または緩和・解消に繋がる
歯並びや噛み合わせなど、少し気になっていることや、子どもたちは「素直すぎるが故の友人の一言」に心が傷ついたりします。大人からすると些細なことに感じていても、口元のコンプレックスがあると ・うまく笑えない ・話せない ・口元を隠す ・歯を見せられない などコミュニケーションに必要な会話がうまくできなくなる可能性があります。早期に、予防・治療をすることが子どもたちの笑顔に繋がります。
◆将来的に歯を抜かないで良い可能性
あごの大きさに対して歯が並ばない場合に、歯の数を減らして並べる矯正歯科治療方法があります。しかし、健康な歯を抜くことは、誰しも喜んでしたいことではありません。子どもの頃にあごを理想的な大きさへ成長させることができれば歯を抜かなくても良い状態へ繋がります。
◆矯正歯科治療の期間を左右する
あごの成長のピークは、上あごは10歳ごろ/下あごは14歳ごろまでで、10代であごの80%は完成すると言われています。その子のタイミングに合った開始時期に始めることで、矯正歯科治療に関わる期間が変わります。
◆発声がスムーズになる
言葉の発達は個人差がありますが、一般的に6歳ごろまでに9割の子どもがおおむね正確に発音できるようになります。4歳くらいでは2割程度に発音の未熟さが残っているとも言われています。発音が不明瞭な原因は様々です。一概に、矯正歯科治療を行うことで良くなる確証は得られません。しかし、発音を獲得すべき時期にお口の機能(筋肉)を整えることで様々な原因を減らすことができると考えています。
いかがでしたでしょうか?
歯並び予防・矯正歯科治療について、様々な意見や考え方があります。 矯正歯科治療をしなくて良いのが、一番良い状況ですが『歯並び・噛み合わせが理想的に成長する』ためには、遺伝的+生まれてからの生活習慣(日々の生活の中での習慣:食事/姿勢/呼吸/睡眠など)なども影響します。今、この時代の環境の中で、子どもたちの成長に与える影響は様々で、現代病と言っても過言ではないかもしれませんね。 しかし、私自身が経験した子育てや歯科治療の中で得た知識や考え方を1人でも多くの方に、選択肢の一つとして知っていただけると嬉しく思います。 歯科治療を通して、子どもたちが健やかに成長する環境を一緒に整えていけたら幸せです。
参照:公益社団法人 日本矯正歯科学会 https://www.jos.gr.jp/about
政久歯科醫院の小児矯正についてはこちら⇨
この記事の筆者
歯科衛生士:中島加奈
プロフィール
- 歯科衛生士歴22年
- 米粉ナチュラルアドバイザー
- 3児の母
- お口育て教室・離乳食講座開催
この記事の監修者
院長:政久 直紀
経歴
- 広島大学歯学部 卒業
- 医療法人光済会 森本歯科医院 勤務
- 医療法人明生会 明生会歯科診療所 院長
- 政久デンタルオフィス 開業
- 政久歯科醫院 移転開業
- 医療法人社団BLISS 開設